存否応答拒否とは、情報公開請求や開示請求に対し、請求された文書が存在するか否かを答えるだけで不開示情報を開示することになる場合に、その存否を明らかにせずに請求を拒否する処分をいう。
「特定個人の病歴に関する文書」を見せてほしいという請求が来たとき、「そんな文書はない」と答えれば本人がその件で記録を持たれていないこと、「あるが不開示」と答えれば記録を持たれていることを、いずれにせよ明らかにしてしまう。文書の存否を答えること自体が不開示情報を開示する結果になる場合に、存否を明らかにせず請求を拒む処分が存否応答拒否である。情報公開法8条・個人情報保護法81条などに根拠を持ち、米国の事件名から通称グローマー拒否とも呼ばれる。乱用すれば情報公開の趣旨を損なうため、存否を答えるだけで保護法益が害される類型に限って用いられ、処分にあたっては存否を明らかにできない理由を示す。本人はこの処分に対し審査請求ができ、審査会の審理では現に文書が存在するか否かを審査会のみが確認するインカメラ審理の対象となる。
存否応答拒否が用いられる典型場面
存否応答拒否は、文書の存否を答えること自体が不開示情報を明らかにする結果となる場合に限って認められる例外的な処分である。典型例は、特定個人の犯罪歴・病歴・信仰などセンシティブな事項に関する文書の請求や、特定個人を名指しした生活保護受給・税の滞納などの記録の請求である。これらは「ある」と答えても「ない」と答えても、対象者がその属性を持つか否かを推認させてしまう。情報公開条例・個人情報保護法ともに、このような場合は当該文書の存否を明らかにしないで請求を拒否できると定める。処分にあたっては、不開示決定と同様に理由を提示するが、存否を秘匿する趣旨から理由の記載は抽象的にならざるをえない。
不開示決定との違いと審査
存否応答拒否は、文書の存在を前提にその内容を出さない不開示決定とは異なり、存否そのものを答えない点に特徴がある。不開示決定であれば「対象文書は存在するが不開示情報に当たる」ことが相手に伝わるが、存否応答拒否ではそれすら伏せる。この処分に対して本人・請求者は審査請求ができ、情報公開・個人情報保護審査会への諮問を経て審理される。審査会は、行政機関が現に当該文書を保有しているか否かを請求者に明かさないまま確認するため、文書を直接見分するインカメラ審理を用いる。審査会が存否応答拒否を妥当でないと判断すれば、改めて存否を前提とした開示・不開示の判断をやり直すことになる。
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