食料・農業・農村基本法とは、食料の安定供給の確保、農業の持続的発展、農村の振興を基本理念に掲げ、国の農業政策の基本方向を定める法律である(平成11年法律第106号)。農業基本法(昭和36年)に代わって制定され、農政の最上位に位置づけられる。
国内で食料をどれだけ作り、不足分をどこまで輸入に頼り、有事にどう供給を守るのか——この国全体の食料の構えを方向づけるのが本法である。農業基本法が規模拡大による所得向上を主眼としたのに対し、本法は食料・農業・農村の三つの領域を一体でとらえ、消費者を含む国民全体の視点を取り込んだ点に転換があった。
2024年6月、制定から25年を経て初めての本格改正が施行された。ウクライナ情勢や輸入価格の高騰を背景に「食料安全保障の確保」が基本理念の筆頭に据えられ、合理的な価格で安定的に供給され国民一人一人が入手できる状態という考え方が明文化された。環境と調和のとれた食料システムの確立も新たな理念に加わった。本法を受けて政府はおおむね5年ごとに食料・農業・農村基本計画を定め、食料自給率の目標などを示す。
2024年改正と「食料安全保障」の前面化
本法は1999年の制定から25年を経て、2024年6月に初めての本格的な改正が施行された。改正前の基本理念は「食料の安定供給」「多面的機能の発揮」「農業の持続的発展」「農村の振興」の4本柱であったが、改正では「食料安全保障の確保」が筆頭の理念へと据え直された。食料安全保障については、単に量が足りるかではなく、合理的な価格で安定的に供給され、かつ国民一人一人がこれを入手できる状態という定義が新たに条文に書き込まれた。背景には、ロシアによるウクライナ侵攻や円安を契機とした輸入食料・飼料・肥料の価格高騰があり、輸入依存の脆弱さが国民的な関心事となったことがある。あわせて環境と調和のとれた食料システムの確立が理念に加えられ、みどりの食料システム戦略と方向性をそろえた。
基本計画を通じた政策の具体化
本法は理念と国の責務を定める枠組み法であり、具体的な数値目標や施策は本法に基づく「食料・農業・農村基本計画」に委ねられる。政府はおおむね5年ごとに基本計画を定め、食料自給率の目標や講ずべき施策を示す。2024年の本法改正を受けて、2025年には改正法の理念を反映した新たな基本計画が策定された。農地の確保、担い手の育成、輸出促進など、農林水産省や自治体が進める個別施策は、この基本計画を介して本法の理念とつながる構造になっている。市区町村レベルの農業振興や地域計画も、最終的にはこの最上位の枠組みの下に位置づけられる。
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