ジチテン

審査請求前置主義

読み:しんさせいきゅうぜんちしゅぎ

別名:不服申立前置主義
意味

審査請求前置主義とは、処分の取消しを求めて取消訴訟を提起する前に、まず行政庁への審査請求を経なければならないとする建前をいう。

処分に不服があるとき、いきなり裁判所に訴えてよいのか、それとも先に行政内部の不服審査を受けなければならないのか。審査請求前置主義は、個別の法律が、取消訴訟の提起に先立って審査請求裁決を経ることを訴訟要件として要求する仕組みである。原則は処分の取消しを審査請求でも取消訴訟でも自由に選べる自由選択主義であり、前置はその例外として個別法が定める場合にのみ及ぶ。国税通則法に基づく税務処分や国民健康保険の保険料賦課などで採られてきた。前置を経ずに提起した取消訴訟は不適法として却下される。平成26年の行政不服審査法改正にあわせて個別法の前置規定が広く縮小・廃止され、現在は前置が残る分野は限られている。

自由選択主義との関係と例外の縮小

行政事件訴訟法第8条第1項本文は、処分の取消しの訴えは審査請求ができる場合でも直ちに提起できると定め、審査請求と取消訴訟のいずれで争うかを処分の相手方が選べる自由選択主義を原則としている。審査請求前置主義は同項ただし書を受けて、個別の法律が「審査請求に対する裁決を経た後でなければ取消しの訴えを提起できない」と定めた場合にのみ生じる例外である。かつては大量の処分を扱う分野で前置を求める個別法が多かったが、平成26年の行政不服審査法の全部改正に伴う関係法律の整備により、前置を要する規定の大幅な見直しが行われ、合理的な理由のないものは廃止・縮小された。実務では、対象となる処分について前置の定めが残っているかを根拠法ごとに確認する必要がある。

前置の例外と訴訟要件としての位置づけ

審査請求前置が定められた処分について前置を経ずに取消訴訟を提起すると、訴訟要件を欠き訴えは却下される。もっとも行政事件訴訟法第8条第2項は、審査請求があった日から三か月を経過しても裁決がないとき、処分等により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき、その他正当な理由があるときには、裁決を経なくても訴訟を提起できる例外を定めている。これにより、行政の判断が遅延する場合や回復しがたい損害が差し迫っている場合には、前置の壁が緩和される。前置主義は行政庁による自己統制と裁判所の負担軽減を狙う制度だが、出訴の機会を遅らせる側面があるため、例外規定と運用がその不利益を調整している。

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