森林経営管理法とは、経営や管理が行われない森林について、市町村が所有者から経営管理の権利を引き受け、意欲と能力のある林業経営者へ再委託する仕組みを定めた法律である(平成30年法律第35号、2019年施行)。この仕組みを森林経営管理制度といい、市町村を森林整備の引き受け手として位置づける。
木材価格の長い低迷と従事者の高齢化で、手入れの届かない私有林が各地に増え、土砂災害の危険や水源涵養機能の低下を招いてきた。誰も管理しない森林をどう動かすか——その受け皿として2019年に施行されたのが森林経営管理法で、それまで森林経営に縁の薄かった市町村を林業行政の前面に押し出した。
制度は経営管理の権利を三者の間で動かすかたちで動く。市町村が森林所有者に経営管理の意向を尋ね、自ら管理できない所有者から経営管理権を引き受けて経営管理権集積計画を作る。引き受けた森林のうち採算が見込めるものは公募で選んだ林業経営者へ経営管理実施権として再委託し、引き受け手が見つからない森林は市町村が自ら管理する。これにより市町村は、所有者への意向調査・境界の確認・集積計画の作成という新しい事務を担うことになり、その費用には森林環境譲与税が充てられる。
採算の取れない森林が市町村に残る構造
森林経営管理制度の弱点は、もうからない森林ほど最後に市町村の手元へ残る点にある。制度は、所有者から引き受けた森林を採算の見込めるものとそうでないものに仕分け、前者は林業経営者へ再委託するが、後者は引き受け手がつかず市町村が自ら管理する類型に振り分けられる。林業経営として成り立たない奥地林や小面積の分散林ほど再委託先が現れにくく、結果として手間も費用もかかる森林が公的管理に集まる。その管理費を誰がどう負担し続けるのかが制度設計上の積み残しで、森林環境譲与税を充てても面積に対して財源が足りない山村が出る。意向調査で所有者の所在や境界が判然としない森林も多く、ここが集積計画づくりの実務上の最大の難所になる。
森林環境譲与税という財源との一体運用
森林経営管理制度を市町村が回すには財源が要り、これに充てるため森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律に基づき、令和元年度から森林環境譲与税が市町村・都道府県へ配分されている(税本体の課税は令和6年度から)。譲与税は意向調査・境界明確化・間伐・人材育成・木材利用の促進などに使え、私有林人工林面積・林業就業者数・人口で按分される。ここで偏りが生じる——森林の少ない都市部にも人口割で配分されるため使い道に苦慮して基金へ積み上げる自治体がある一方、森林を多く抱える山村では膨らむ事務量に対して財源が追いつかない。制度(森林経営管理法)と財源(譲与税)は一体で設計されながら、配分基準のために両者の必要量がずれる点が運用の論点になる。
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