信頼保護の原則とは、行政の言動を信頼して行動した私人の信頼が正当である場合に、その信頼を保護しなければならないとする行政法上の一般原則をいう。
誤った内容の行政指導や通知を信じて事業を進めた住民が、後で行政から不利益な処分を受けたとき、その住民の信頼はどこまで守られるのか、という場面で働くのが信頼保護の原則である。行政が示した見解や許認可を私人が信頼して行動したのに、行政が後からこれを覆すと私人が不測の損害を被ることから、一定の場合に行政の翻意を制約する考え方として認められてきた。民法上の信義則を行政法の領域に及ぼしたものと位置づけられ、判例も租税法律関係などで限定的にこの原則を適用してきた。もっとも、行政は法律による行政の原理に拘束されるため、違法な状態を信頼したというだけでは保護されにくく、信頼が正当であること、私人が信頼に基づいて具体的な行動をとったこと、保護すべき利益と法律適合性の要請とを比較して前者が上回ることなどが要件として問われる。担当者は、過去の回答や指導を翻す場面でこの原則との緊張を意識する必要がある。
信義則との関係と適用要件
信頼保護の原則は、民法第1条第2項の信義誠実の原則(信義則)を行政法の領域に応用したものと理解されている。行政が示した見解・指導・許認可を私人が信頼して行動した場合に、行政が後にこれを翻して私人に不利益を課すことを制約する。判例は、租税法律主義が支配する租税法律関係についても、納税者間の平等・公平という要請を犠牲にしてもなお信頼を保護すべき特別の事情がある場合に限ってこの原則の適用を認める姿勢を示してきた。適用にあたっては、行政の言動に対する私人の信頼が正当であること、その信頼に基づいて私人が具体的な行動をとったこと、保護すべき信頼利益が法律による行政の原理(法律適合性の要請)を上回ることが問われる。違法な取扱いを信頼しただけでは原則として保護されず、適法性の要請との比較衡量が前提になる点に、私人間の信義則とは異なる行政法上の制約がある。
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