親権喪失とは、父母による虐待や悪意の遺棄など親権の行使が著しく子の利益を害する場合に、家庭裁判所が父母の親権を期間の定めなく失わせる制度である。
虐待事案で、子の安全を確保するために親の権限をどこまで制限すべきかは、児童相談所が直面する重い判断である。その最も強い手段が親権喪失で、民法に基づき、父母による虐待や悪意の遺棄があるとき、または親権の行使が著しく困難・不適当で子の利益を著しく害するときに、家庭裁判所が期間を定めずに親権を失わせる。2年以内に限って親権の行使を止める親権停止より強力で、原因が解消しない限り親権は回復しない。請求できるのは子・親族・未成年後見人のほか、児童相談所長も児童福祉法に基づき家庭裁判所へ請求できる。親権が失われた後は未成年後見が開始され、未成年後見人が子の監護や財産管理を担う。実務では、まず一時保護や施設入所措置で子を分離し、保護者の同意が得られない場合に親権停止や親権喪失の請求を検討する流れが多く、子の利益を最優先に手段の強弱を選ぶ。
親権停止との関係と請求権者
親権を制限する民法上の制度には、強い順に親権喪失・親権停止・管理権喪失がある。親権喪失は期間の定めなく親権そのものを失わせる最も強い措置で、虐待や悪意の遺棄など親権の行使が著しく子の利益を害する場合に限られる。これに対し親権停止は、2011年の民法改正で創設された比較的新しい制度で、2年を超えない範囲で期間を定めて親権の行使を止めるにとどまり、原因が解消すれば親権を回復できる。喪失は影響が大きく適用が慎重になりがちであったため、より使いやすい中間的な手段として停止が設けられた経緯がある。請求権者は、子本人・その親族・未成年後見人および未成年後見監督人に加え、児童福祉法により児童相談所長も家庭裁判所へ請求できる。
喪失後の未成年後見と児童福祉実務
親権喪失の審判が確定すると、その子に親権を行う者がいなくなるため、未成年後見が開始される。家庭裁判所が選任する未成年後見人が、子の身上監護と財産管理を担う。児童相談所が関与する虐待事案では、いきなり親権喪失を求めるのではなく、まず一時保護や児童福祉法に基づく施設入所措置で子の安全を確保し、保護者が措置に同意しない、あるいは医療行為への同意を不当に拒むといった場面で、親権停止や親権喪失の請求を段階的に検討するのが一般的である。親権喪失は親子関係に与える影響が大きいため、原因の重大性と回復の見込みを慎重に見極めたうえで、子の利益を最優先に判断される。
つながりのある用語
対比
ご意見箱(匿名でひとことから投稿できます)