ジチテン

執行命令

読み:しっこうめいれい

意味

執行命令とは、法規命令のうち、法律やその委任命令を執行するために必要な手続的細目を定める命令である。新たな権利義務を国民に課す委任命令と異なり、既に法律で定められた義務をどう履行させるかという手続面を規律する点に特徴がある。

ある政令省令が法律の委任を要するのか、それとも委任なしに制定できるのかは、その定めが国民の権利義務を新設するか否かで分かれる。執行命令は後者であり、申請書の様式、添付書類、提出期限、届出の手続といった、法律が既に課した義務を実行に移すための細目を定める。これらは法律の内容を具体化するだけで新たな負担を生まないため、個別の法律の委任がなくても、行政権が法律を誠実に執行する責務(憲法第73条第1号)を根拠に制定できる。

そのため執行命令には、委任命令のような「白紙委任の禁止」や委任の範囲の逸脱といった統制論点は生じにくい。もっとも、手続細目を装って実質的に新たな義務を課せば、それは委任の根拠を欠く委任命令となり違法となるため、両者の線引きが実務上の争点になる。

委任命令との区別が問題になる場面

執行命令と委任命令はいずれも法規命令(国民を拘束する一般的・抽象的定め)に属するが、新たな権利義務を創設できるかで決定的に異なる。委任命令は法律の個別委任を受けて実体的な権利義務を新設できるのに対し、執行命令はあくまで法律が既に定めた義務の履行手続を定めるにとどまる。実務で争いになるのは、手続規定の体裁をとりながら実質的に申請者へ新たな要件や負担を課している場合である。たとえば申請の添付書類として法律が予定していない実体的要件の証明を求めれば、それは執行命令の限界を超え、委任の根拠を欠く違法な定めと評価されうる。命令の適法性を検討する際は、その規定が「手続の細目」か「新たな実体規律」かを条文ごとに腑分けする必要がある。

委任を要しない根拠と限界

執行命令が個別の法律の委任なしに制定できるのは、内閣が法律を誠実に執行する責務(憲法第73条第1号)に手続細目を定める権能が含まれると解されるためである。地方公共団体でも、長や委員会が法令や条例を執行するために規則規程で手続を定める場面がこれにあたる。ただし「執行に必要な手続」の範囲は無限定ではなく、法律の趣旨・目的の枠内に限られる。法律が想定していない不利益や、申請の実体的な拒否事由を執行命令で新設すれば、法律による行政の原理に反する。手続的細目の体裁でどこまで規律できるかは、もとの法律が何を委ね、何を留保したかの解釈に帰着する。

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