執行不停止の原則とは、行政処分に対して審査請求や取消訴訟が提起されても、処分の効力・処分の執行・手続の続行は当然には停止しないという原則をいう(行政不服審査法第25条第1項・行政事件訴訟法第25条第1項)。
処分に不服があって争いを起こせば、その処分の効力は止まるのか。日本の行政争訟法は逆の立場をとり、争っても処分の効力は当然には止まらないとする。この立場が執行不停止の原則である。背景には、争訟のたびに処分が止まると行政運営が停滞し、濫用的な争訟で公益の実現が妨げられるという行政上の要請がある。そのため、不服申立てや訴訟の提起そのものには処分を止める効果を認めず、停止が必要な場合は別途、執行停止の申立てという例外手続によって裁判所や審査庁の判断を仰ぐ構造になっている。自治体の処分担当者にとっては、相手方が審査請求や訴訟を起こしても、執行停止の決定がない限り当該処分を前提に事務を進められることを意味する。ドイツの執行停止原則とは対照的な制度設計であり、救済の実効性確保が課題として議論されてきた。
原則と例外の関係
執行不停止は「処分は争われても動かない」という建前であり、これを覆すのが執行停止である。行政事件訴訟法第25条第2項は、処分の取消しの訴えの提起があった場合に、重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所が申立てにより処分の効力等の全部または一部の停止を決定できると定める。行政不服審査法でも第25条で審査庁による執行停止が定められ、処分庁の上級行政庁または処分庁である審査庁は職権でも停止できる。つまり停止は原則の否定ではなく、原則を前提にした個別の例外措置であり、申立人が損害の重大性と緊急性を主張・疎明して初めて発動余地が生じる。本案の取消訴訟が認容されるまで処分の効力が続くことによる不利益を、暫定的に食い止める仕組みが執行停止だと整理できる。
自治体実務での意味
自治体が営業停止処分や許可の取消処分、強制撤去命令などを行った後、相手方が審査請求や取消訴訟を提起しても、執行不停止の原則により当該処分は効力を維持する。したがって担当課は、係争中であっても処分内容に沿った後続事務を進められる。ただし相手方が執行停止を申し立て、裁判所または審査庁が停止決定を出した場合は、その範囲で処分の効力・執行・手続続行が暫定的に止まる。実務上は、処分時に相手方へ不服申立ての方法とあわせて執行停止の制度があることを教示で示す一方、停止決定が出るまでは処分を前提とした事務処理を維持する判断を迫られる場面もある。
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