死票とは、選挙において当選者の決定に結びつかなかった票、すなわち落選した候補者や議席に反映されなかった政党へ投じられた票をいう。
選挙制度を選ぶとき、投じられた票がどれだけ議席に反映されるかは制度設計の根幹に関わる。死票は、この民意の反映度を測るうえで避けて通れない概念である。一つの選挙区から一人だけを選ぶ小選挙区制では、当選者以外に投じられた票はすべて議席に結びつかず、死票が多くなる。これに対し、得票数に応じて議席を配分する比例代表制では、少数政党に投じられた票も議席に反映されやすく、死票は相対的に少ない。死票の多寡は、二大政党化を促し政権交代を起こりやすくするか、それとも多様な民意を議席に映し出すかという、選挙制度の性格そのものと表裏をなす。地方議会の選挙でも、市町村全域を一つの選挙区として多数の議員を選ぶ大選挙区制をとるか、区域を分けて選挙区を設けるかで死票の量は変わり、定数や区割りの議論の論点となる。
選挙制度ごとの死票の出方
死票の多寡は、議席をどのように配分するかという制度の仕組みによって大きく変わる。小選挙区制は一つの選挙区から一人しか当選しないため、二位以下の候補者に投じられた票はすべて死票となり、極端な場合には有効投票の半分近くが議席に反映されないこともある。その代わり、大政党に有利に働いて二大政党化と政権交代を促しやすいとされる。比例代表制は各政党の得票数に応じて議席を割り振るため、少数政党の票も議席に結びつきやすく死票は最も少ないが、小党分立を招きやすい。大選挙区制や中選挙区制はその中間に位置し、一つの選挙区から複数人を選ぶぶん小選挙区制より死票は抑えられる。日本の衆議院がとる小選挙区比例代表並立制は、小選挙区で生じる死票を比例代表が政党単位である程度救済する設計になっている。
死票と一票の格差・制度選択の論点
死票は、投票価値の平等をめぐる議論とも結びつく。一票の格差が選挙区間の人口と定数の不均衡から生じる「票の重みの差」であるのに対し、死票は当落の仕組みから生じる「議席に反映されない票」であり、両者は別の問題だが、いずれも民意がどれだけ正確に議席へ写し取られるかという同じ関心につながる。死票を減らそうとして比例性を高めると小党が乱立して政権が不安定になりやすく、逆に死票を許容して小選挙区制をとると民意の集約と政権の安定が得られる代わりに少数意見が切り捨てられる。どちらを重く見るかは正解のない価値判断であり、議員定数や選挙区の区割りを定める条例・法律の改正論議では、死票の量がしばしば制度の優劣を論じる物差しとして持ち出される。
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