社会的入院とは、医療上は入院の必要性が高くないにもかかわらず、在宅での介護や受け入れ先の確保が難しいために、生活の場として病院への入院が長期化する状態をいう。
退院できる状態なのに帰る先がないため病院に留まり続ける高齢者を、どう地域へ移すか。この課題を言い表すのが社会的入院で、医療の必要度は低いのに介護力の不足や住まいの問題から入院が長期化する状態を指す。本来は治療を終えれば退院するはずが、独居や老老介護で在宅介護が難しく、入所先の特別養護老人ホームも空きがないといった事情から、病院が事実上の生活の場になってしまう。社会的入院は限られた医療資源を必要度の高い患者に回せなくし、医療費を押し上げる要因として長く問題視されてきた。介護療養病床の廃止や介護医療院の創設、地域包括ケアシステムの構築は、この社会的入院を解消し医療と介護の役割分担を進めるという政策の流れの中にある。
医療・介護の機能分化政策の出発点
社会的入院は、医療と介護の機能分化を進める一連の政策の背景にある問題意識である。医療の必要度が低い高齢者が生活の場として病院に長期入院することは、医療資源の配分をゆがめ医療費を押し上げるとして批判され、その受け皿づくりが課題となった。介護保険制度の創設(2000年)は、それまで医療保険で賄われていた高齢者介護を介護の制度として切り出す狙いを持ち、社会的入院の解消はその主要な目的の一つであった。医療の必要度が低い長期入院の温床とされた介護療養病床は廃止が決まり、経過措置を経て2024年3月末に終了し、その受け皿として2018年に介護医療院が創設された。
解消を阻む在宅・受け皿の壁
社会的入院は「病院から出す」だけでは解決しない。退院後に本人を支える在宅の介護力や住まい、入所できる施設が確保されて初めて地域への移行が成り立つためである。独居高齢者の増加や老老介護、家族の介護負担、特別養護老人ホームの待機などが背景にあると、医療上は退院可能でも行き場がないという事態が生じる。入退院支援や退院支援はこうした状況に対応し、入院早期から退院後の生活を見据えてケアマネジャーや地域包括支援センターと連携する取り組みである。地域包括ケアシステムが目指す「住み慣れた地域での生活継続」は、社会的入院を生まない地域づくりという側面を持つ。
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