災害緊急事態とは、災害対策基本法第105条に基づき、著しく異常かつ激甚な非常災害が発生し国の経済・公共の福祉に重大な影響を及ぼす場合に、内閣総理大臣が閣議にかけて布告する国家的な緊急状態をいう。
巨大災害で物資の買い占めや価格高騰、金融の混乱が起きると、平時の法律だけでは対応が間に合わず社会全体が機能不全に陥りかねない。災害緊急事態は、こうした国家レベルの危機に対し内閣が一時的に強い経済統制権限を発動できるようにするための法的スイッチである。
布告がなされると、内閣は生活必需物資の配給・譲渡制限、価格統制、債務の支払い猶予などを政令で定められる。布告は国会の承認を要し、国会が閉会中などの場合は事後承認となる。創設以来長らく発動例がなかったが、東日本大震災で初めて緊急災害対策本部の設置とあわせて関連規定が動いた経緯があり、発動のハードルが極めて高い「最後の備え」として位置づけられている。緊急災害対策本部の設置とは別個の手続である点に注意を要する。
布告で何が可能になるか
災害緊急事態の布告の核心は、平時の経済秩序を内閣が政令で一時的に統制できるようになる点にある。災害対策基本法第109条は、布告があったとき国会が閉会中などで法律による措置を待てない場合に、内閣が生活必需物資等の譲渡・引渡しの制限や配給、その対価の最高額の決定、金銭債務の支払猶予などを政令で定められると規定する。これは私人間の取引や財産権に踏み込む強い措置であり、買い占め・売り惜しみ・便乗値上げや金融取付けといった、巨大災害に伴う社会経済の混乱を抑える狙いを持つ。政令で罰則を設けることもできる。平時であれば法律によらなければ制限できない事項を内閣限りで動かせる点に、この制度の例外性がある。
布告の要件と国会承認
布告できるのは「著しく異常かつ激甚な非常災害」が発生し、国の経済・公共の福祉に重大な影響を及ぼす異常事態に際し緊急の必要があるときに限られる。手続は内閣総理大臣が閣議にかけて布告し、布告には地域・事態の概要・期間を示す。布告をしたときは内閣総理大臣は国会に付議して承認を求めなければならず、承認が得られなければ将来に向かって効力を失う。発動のハードルは極めて高く、東日本大震災で関連する経済統制規定が議論された局面はあったものの、運用例は乏しい。緊急災害対策本部が「応急対策の指揮系統」を立ち上げる手続であるのに対し、災害緊急事態の布告は「経済統制権限を開く」手続であり、両者は目的も法的効果も異なる。
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