歴史公文書とは、歴史資料として重要な公文書その他の文書であって、公文書管理法上、現用の業務利用を終えた後も保存・利用の対象として位置づけられるものをいう。
保存年限を過ぎた文書を「廃棄してよいのか、残すべきなのか」と判断する場面で、その線引きの基準になるのが歴史公文書という区分である。公文書管理法は、行政機関の意思決定や事務処理の過程を記録した文書のうち、歴史資料として重要なものを歴史公文書等と位置づけ、業務に使う現用文書としての役割を終えた後も、後世への説明責任を果たすために保存・利用させる仕組みを設けている。具体的には、各機関が保存期間を満了した文書を廃棄するか移管するかを判断し、歴史資料として重要と認められるものを公文書館等へ移して特定歴史公文書等として永続的に保存する流れになる。歴史公文書に当たるかどうかは、政策の立案・決定の経緯、住民の権利義務に関わる記録、地域の重要な出来事の記録といった観点から判断される。自治体の文書担当者にとっては、保存期間満了時の移管・廃棄の協議や、公文書館を持つかどうかという制度設計の判断において、何を歴史公文書として残すかの選別が中核的な実務になる。
現用文書から歴史公文書への流れ(移管と廃棄)
公文書管理法の体系では、文書はまず業務に使う現用文書として作成・保存され、定められた保存期間を満了すると、廃棄するか歴史公文書等として残すかの判断(評価選別)にかけられる。歴史資料として重要と認められた文書は公文書館等へ移管され、移管後は特定歴史公文書等として、原則として永久に保存され、利用請求に応じて一般の利用に供される。国の制度では保存期間満了時の措置(移管または廃棄)をあらかじめ定め、廃棄には内閣総理大臣(実務上は国立公文書館等の関与)との協議を要する仕組みになっており、機関の都合だけで歴史資料を失わないよう歯止めがかけられている。自治体でも、公文書管理条例を制定して同様の評価選別と移管の手続を定める例が増えており、文書担当者は保存期間表の設定段階から「最終的に残すべき記録か」を意識する必要がある。
歴史公文書の選別基準と公文書館の役割
どの文書を歴史公文書として残すかは、おおむね、①法令の制定・改廃や重要な政策の立案・決定の経緯がわかる文書、②住民の権利義務の得喪に関わる記録、③組織・事務の沿革を示す文書、④災害・大規模事業など地域にとって重要な出来事の記録、といった観点から評価される。これらを保存し、目録を整備し、住民の利用に供する拠点となるのが公文書館であり、専門知識を持つアーキビスト(公文書専門員)が評価選別・保存・公開を担う。公文書館を独自に持たない小規模な自治体では、図書館や郷土資料館が代替的に機能したり、都道府県の公文書館と連携したりする例もある。歴史公文書の利用は情報公開制度とは別の利用請求の仕組みによることが多く、現用文書の開示請求とは根拠も窓口も異なる点に注意が必要である。
ご意見箱(匿名でひとことから投稿できます)