給与勧告とは、人事院または人事委員会が、公務員給与を民間給与の水準に合わせて改定するよう、議会・長(国は国会・内閣)に対して行う勧告をいう。
毎年の人事委員会報告で「較差〇円・〇%」という数字が示されたとき、その勧告に長や議会はどこまで従う義務があるのか。地方公務員は争議行為が禁じられ、給与は条例で定まる(給与条例主義)ため、自ら交渉で給与を引き上げる手段を持たない。その代償措置として、中立の人事委員会(小規模団体では公平委員会を置くため勧告機能はなく、国の人事院勧告や近隣団体を参照する)が地域の民間給与を実地調査し、公務員給与との較差を埋めるよう勧告する。勧告に法的拘束力はないが、給与改定の事実上の基準として尊重され、これを受けて給与条例が改正される。国家公務員については人事院が同じ仕組みで国会・内閣に勧告し、その内容は地方の改定議論の出発点にもなる。勧告を尊重せず据え置けば代償措置が機能せず、労働基本権制約の正当性が揺らぐという構造で制度が支えられている。
勧告が拘束力を持たないのに尊重される理由(代償措置論)
民間労働者は労働組合を後ろ盾に団体交渉し、争議行為を背景に賃金を決められる。これに対し公務員は職務の公共性から争議行為が禁止され、給与も条例で定まるため自ら交渉で決められない。この制約を埋め合わせる代償措置として、中立の人事院・人事委員会が民間給与との較差を調査し、均衡を保つよう勧告する制度が置かれている。勧告に法的拘束力はないが、これを尊重せず給与を据え置けば代償措置が空洞化し、労働基本権を制約する正当性が揺らぐ。この構造ゆえに、勧告は事実上の基準として尊重され、ほぼそのまま給与条例改正へつながるのが通例である。
較差の算定から条例改正までの流れ
人事委員会は毎年春に管内の民間事業所の給与を実地調査し、同種・同等の職務にある公務員給与と比較して較差を算定する(職種別民間給与実態調査に相当)。較差は月例給と特別給(期末手当・勤勉手当)の双方について示され、これを解消するための給与表改定や手当改定の方法が勧告本体に盛り込まれる。勧告は秋までに議会・長へ提出され、長はこれを踏まえて給与改定条例案を編成し、議会が審議・議決して給与表が改定される。較差がわずかな年や財政事情がある年は、勧告どおりの改定が見送られたり実施時期が調整されたりすることもあり、勧告と実際の改定が完全に一致するとは限らない。
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