ジチテン

救助実施市

読み:きゅうじょじっしし

意味

救助実施市とは、災害救助法第二条の二の規定に基づき、災害救助の実施体制が整っているとして内閣総理大臣が指定した市であって、その区域内で都道府県に代わり自らの判断で救助を実施する市をいう。

大都市が被災したとき、住民に身近な市が救助の判断を待たずに動けないか。災害救助法では救助の実施主体は原則として都道府県であり、市町村は都道府県の補助委任を受けて事務を担うにとどまる。救助実施市はこの原則の例外で、平成三十年(二〇一八年)の法改正により創設された。内閣総理大臣の指定を受けた市は、自らの区域について都道府県を経由せず救助の種類・程度・方法を決定し、避難所の設置や応急仮設住宅の供与を主体的に行える。指定を受けるには救助の実施体制や災害救助基金の積立てなど一定の要件を満たす必要があり、指定都市を中心に運用されている。指定後は災害救助費の国庫負担も市が直接受けるため、都道府県との費用分担や事務の重複を避ける調整が実務上の論点となる。

都道府県・救助実施市・市町村の役割分担

災害救助法における救助の法定実施主体は都道府県知事であり、市町村長は同法第十三条に基づく事務委任や、緊急時に都道府県の補助を行う立場にとどまるのが原則である。これに対し救助実施市は、内閣総理大臣の指定を受けることで、自らの区域内では都道府県と並ぶ独立した実施主体となり、救助の種類・程度・方法の決定権を持つ。平成三十年の法改正は、東日本大震災や熊本地震で大都市が被災した際に、都道府県を経由する意思決定が現場の迅速性を損なった反省を踏まえたものである。指定された市は救助の実施に加え、災害救助基金の積立てや災害救助費国庫負担金の経理も独立して担うため、平時から救助実施体制の整備と財源確保を自ら担う点で、委任を受けるだけの市町村とは責任の重さが異なる。

指定の要件と国庫負担の経路

救助実施市の指定は、申出をした市について、救助を迅速・的確に実施できる体制や財政基盤を内閣総理大臣が審査して行う。指定を受けると、当該市が支弁した災害救助費は、都道府県を経由せず国から直接国庫負担を受ける経路に切り替わる。災害救助法は救助費の国庫負担割合を都道府県等の標準税収入額に対する救助費の比率に応じて逓増させる仕組みを採るため、救助実施市についても市の財政規模を基準に負担割合が算定される。これにより、同一都道府県内でも救助実施市の区域とそれ以外の区域で費用の経理主体が分かれることになり、災害時の費用集計や精算の事務が二系統に分かれる。指定市の多くが指定を受けているが、指定は義務ではなく、各市が体制整備の負担と意思決定の自律性を比較して選択する。

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