公用文とは、国や地方公共団体の機関がその事務において作成する文書の総称であり、表記・用字・用語の統一基準に従って書かれる行政文書をいう。法令・通知・告示から起案文書や通知書まで、対外・対内を問わず公務で作成する文書がこれに含まれる。
同じ内容の通知でも、担当者ごとに漢字の使い方や送り仮名、句読点の打ち方がばらばらだと、住民や他団体に対する団体としての一貫性が損なわれ、解釈の食い違いも生じる。公用文はこうした表記の揺れを抑えるために、国の「公用文作成の考え方」(令和4年文化審議会建議。それ以前は昭和27年の「公用文作成の要領」)や各団体の文書規程が定める用字用語のルールに沿って書かれる。
ルールの中心は、常用漢字表に基づく漢字使用、横書きを原則とすること、算用数字の使用、項目を起こす際の見出し符号の付け方など、読み手が誰であっても同じように読めるための約束事である。法令文に特有の言い回し(「ものとする」「することができる」など)や、接続のための「及び」「並びに」「又は」「若しくは」の使い分けも公用文の作法に含まれ、起案の段階で先輩職員から赤を入れられる典型的な箇所となる。
近年は、行政が住民へ出す文書については、こうした伝統的な作法を守りつつも平易で分かりやすい表現を心がける方向へと見直しが進んでいる。庁内向けの起案文書と、住民向けの通知やお知らせとで、求められる文体の硬さが異なる点も実務上の判断どころとなる。
表記ルールの拠りどころ
公用文の書き方は、国が示す指針と各団体の文書規程の二層で定まる。国の指針は長らく昭和27年の「公用文作成の要領」が用いられてきたが、令和4年1月に文化審議会が「公用文作成の考え方」を建議し、現在はこれが事実上の標準となっている。これらは漢字使用を常用漢字表の範囲内とすること、送り仮名を「送り仮名の付け方」に従うこと、横書きと算用数字を原則とすることなどを定める。地方公共団体はこれを参照しつつ、自らの文書規程や文書事務の手引で具体的な表記例を示すのが通例で、起案の際にはまず自団体のルールを確認することになる。
用字用語の使い分けが問われる場面
公用文で職員がとくに迷うのが、似た意味の語の使い分けである。「及び」と「並びに」は並列の階層が違い、二段階の並列では小さな結び付きに「及び」、大きな結び付きに「並びに」を使う。「又は」と「若しくは」も同様で、選択の階層によって使い分ける。「することができる」は許可・権能、「するものとする」は原則的な義務付け、「しなければならない」は強い義務と、文末表現が法的な意味合いを左右する。こうした語法は起案文書の決裁過程で合議や審査を受ける際にも点検され、表記の誤りが差し戻しの原因になることが多い。
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