ジチテン

国家責任の原理

読み:こっかせきにんのげんり

意味

国家責任の原理とは、生活保護法第1条に定める原理で、最低限度の生活保障を国がその責任において直接行うべきものとする原理をいう。

生活保護の費用や実施責任を最終的に誰が負うのか、という問いに「国」と答えるのが国家責任の原理である。生活保護法第1条は、日本国憲法第25条の生存権を国の責任で具体化すると宣言し、保護の実施を慈善や家族・地域の相互扶助に委ねず、公的責任で行うことを制度の出発点に据える。実務では、保護費の4分の3を国が負担し、残りを実施機関である都道府県・市の負担とする費用構造に国家責任が表れる。実施機関が福祉事務所であっても、その事務は国の責任を委任された法定受託事務であり、保護の決定・実施に対する不服は最終的に厚生労働大臣の所管へ連なる。慈恵的な恩恵ではなく国が負うべき法的義務として保護を位置づける点が、後続の三原理を貫く土台となる。

四原理の筆頭としての位置づけ

生活保護法は冒頭の第1条から第4条に四つの原理を置く。国家責任の原理(第1条)、無差別平等の原理(第2条)、最低生活保障の原理(第3条)、補足性の原理(第4条)である。このうち国家責任の原理は、誰が保護を行う主体かを定める原理であり、残る三原理が「誰を・どの水準で・どの順位で」保護するかを定めるための前提として最上位に置かれる。慈善事業や家族扶養に保護を委ねた旧救護法までの仕組みを否定し、生存権保障を国の法的義務へ転換した点に意義があり、保護の決定・変更・廃止に処分性が認められ審査請求の対象となるのも、保護が恩恵でなく国の義務だからである。

費用負担と実施責任の分担

国家責任は費用負担の構造に具体的に表れる。保護費は国が4分の3、実施機関である都道府県・市・福祉事務所設置町村が4分の1を負担する。実施そのものは福祉事務所が担うが、これは地方自治法上の法定受託事務であって、国の責任を地方が受託して執行する関係にある。厚生労働大臣は保護基準を告示で定め、実施機関を指揮監督する権限をもつ。このため保護基準の改定や運用の統一は国の責任で行われ、地域による恣意的な切り下げは認められない。実施機関の判断に対する不服は審査請求として都道府県知事へ、再審査請求として厚生労働大臣へ連なり、責任の所在が国に帰着する構造になっている。

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