ジチテン

国家賠償

読み:こっかばいしょう

意味

国家賠償とは、公権力の行使に伴う違法な行為や公の営造物の設置・管理の瑕疵によって私人に生じた損害を、国または公共団体が賠償する制度をいう。

公務員の違法な処分や、道路・河川といった公共施設の欠陥で住民が損害を受けたとき、その損害は誰がどう償うのか。国家賠償は、違法な行政活動によって生じた損害を国や自治体が金銭で賠償する制度であり、憲法第17条が保障する国家賠償請求権を国家賠償法が具体化している。賠償が認められる類型は二つで、公権力の行使に当たる公務員の故意・過失による違法行為を対象とする責任(国家賠償法第1条)と、公の営造物の設置・管理の瑕疵を対象とする無過失責任(同法第2条)に分かれる。行政の行為が適法であることを前提に財産的損失を補填する損失補償とは、原因となる行為が違法か適法かという点で対をなす。自治体実務では、道路の陥没事故や保育・福祉の現場での事故をめぐって賠償の可否が争われることが多く、賠償した団体が故意・重過失のある公務員に求償できるかも論点となる。

二つの賠償責任の類型

国家賠償は、国家賠償法が定める二つの責任類型からなる。第一は同法第1条が定める公権力の行使に基づく責任で、国・公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて故意または過失によって違法に他人に損害を与えた場合に、国・公共団体が賠償責任を負う。この場合、加害公務員個人は被害者に対して直接の責任を負わないと解されており、被害者は国・公共団体に賠償を請求する。第二は同法第2条が定める営造物責任で、道路・河川・庁舎などの公の営造物の設置または管理に瑕疵があり損害が生じたときの責任であり、設置・管理者の過失を要しない無過失責任とされている点に特色がある。いずれの類型でも、賠償責任を負った国・公共団体は、公務員に故意または重大な過失があったときに限り、その公務員に対して求償できる。

損失補償との区別と自治体の備え

国家賠償は行政の行為が違法であることを前提とするのに対し、損失補償は適法な公権力の行使によって特定人に生じた財産的損失を埋め合わせる制度であり、両者は原因行為の適法・違法によって性格を異にする。行政活動による損害の塡補を扱う行政救済の二本柱として、しばしば一対で論じられる。もっとも、土地収用に伴う補償のように一つの事業の中で両者が問題となる場面もあり、違法な収用裁決を争う取消訴訟と並行して国家賠償が検討されることもある。自治体実務では、賠償リスクに備えて全国市長会全国町村会の総合賠償補償保険などに加入する例が多く、事故が起きた際には事実関係の調査と過失・瑕疵の有無の検討を経て、和解や訴訟による解決が図られる。

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