公の営造物とは、国または公共団体が直接公の目的に供している有体物をいい、国家賠償法第2条の賠償責任の対象となる物的施設を指す。
道路の陥没や公園の遊具の破損で住民がけがをしたとき、自治体が賠償責任を負うかどうかを左右するのが、その施設が公の営造物に当たるかという判断である。公の営造物とは、国または公共団体が直接公の目的に供している有体物をいい、国家賠償法第2条はその設置または管理に瑕疵があり損害が生じた場合に、過失の有無を問わない無過失責任を国・公共団体に負わせている。道路・河川・公園・学校の建物やプール・庁舎・上下水道施設などが典型で、不動産に限らず公用車や工事用機械といった動産も含まれる。人工の施設だけでなく、河川や海浜のように自然のままで公の用に供されている物(自然公物)も判例上ここに含まれると解されている。民法第717条の工作物責任が「土地の工作物」に限られ占有者には免責の余地があるのに対し、公の営造物の範囲はより広く、管理者に免責が認められない点で住民の救済に厚い。ある事故で賠償を求める際は、まずその施設が公の営造物に該当するかが出発点となる。
営造物の範囲と公物との関係
公の営造物は、講学上の概念である公物(行政主体が直接公の目的に供する有体物)とほぼ重なるが、国家賠償法第2条の解釈としては公物よりやや広く捉えられている。判例は、河川・海浜のように人の手が加わっていない自然公物や、テニスコートのネット・道路の防護柵といった動産も営造物に含めてきた。一方で、純然たる私経済作用に供される普通財産(売払い予定の遊休地等)は、直接公の目的に供されていないため営造物に当たらない。庁舎や公務員宿舎のように行政自身が使う公用財産も、住民の利用に供する道路・公園等の公共用財産も、いずれも公の目的に供されている限り営造物となる。事故の賠償実務では、損害を生じた物が地方自治法上の行政財産であるか否かよりも、現に公の目的に供されているかという実質で営造物該当性が判断される点に注意を要する。
設置・管理の瑕疵と無過失責任
国家賠償法第2条の責任は、営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態(設置・管理の瑕疵)があれば、管理者に過失がなくても成立する無過失責任である。瑕疵の有無は、営造物の構造・用法・場所的環境・利用状況・事故発生の予測可能性・回避のための費用などを総合して判断される。最高裁は、高知落石事件で予算不足を理由とする免責を認めず、財政的制約は瑕疵を否定する事由にならないとした。他方、道路に第三者が放置した物による事故のように、管理者が時間的に回避できなかった場合には瑕疵が否定されることもある。自治体の実務では、道路パトロールの記録・施設点検簿・補修の履歴が、瑕疵の有無や予見可能性を争う際の中心的な証拠となるため、点検と記録の体制整備が賠償リスクの管理に直結する。
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