棄却とは、審査請求や訴えが適法であることを前提に中身(本案)を審理した結果、処分は違法・不当でなく申立てに理由がないとして退ける裁決・判決である。
申立てが入口の要件を満たして審理に進んでも、処分そのものに違法や不当が見当たらなければ、申立人の言い分は通らない。棄却は、本案を審理したうえで「処分は適法であり、請求には理由がない」と判断して退ける結論である。要件を欠くために中身を見ずに切る却下とは異なり、棄却は処分の当否を実体的に判断したうえでの結論であり、行政の判断が裁決庁・裁判所によって是認されたことを意味する。
裁決書・判決書では主文に「本件審査請求を棄却する」「原告の請求を棄却する」と記される。実務では、処分が適法と確認されることで処分庁の対応に区切りがつく一方、申立人にとっては中身まで審理されたうえでの敗訴であり、却下より重い意味を持つ。なお、処分が違法であっても公益上の理由から例外的に請求を棄却する事情判決という特殊な類型が行政事件訴訟法に置かれている。
棄却・却下・認容の三分法における位置
審査請求や取消訴訟の結論は、却下・棄却・認容の三つに大別される。却下は入口の要件を欠く門前払い、棄却は中身を審理して申立人の言い分を退けるもの、認容は申立人の言い分を認めて処分を取り消し・変更するものである。棄却はこのうち「中身まで審理したが行政側が勝つ」結論にあたり、処分の適法性が公的に確認される。申立人にとっては、却下が「土俵に乗れなかった」のに対し棄却は「土俵で負けた」結末であり、同じ事由での再度の争いはより困難になる。三者は裁決書・判決書の主文の文言で区別され、実務ではこの三語を取り違えないことが第一歩となる。
事情判決による例外的な棄却
通常、処分が違法と判断されれば請求は認容され処分は取り消される。しかし行政事件訴訟法は、処分が違法であっても、これを取り消すことが公の利益に著しい障害を生じる場合に、諸般の事情を考慮して請求を棄却できる事情判決の制度を置く。この場合、裁判所は判決主文で処分が違法であることを宣言したうえで請求を棄却する。土地収用や大規模な公共事業のように、すでに既成事実が積み上がり処分の取消しが社会的混乱を招く場面で用いられてきた。形式的には棄却だが、違法の宣言を伴う点で通常の棄却とは性格が異なり、原告は国家賠償による救済に向かう余地が残る。
ご意見箱(匿名でひとことから投稿できます)