起業者とは、土地収用法に基づき、公共の利益となる事業のために土地を収用または使用しようとする者をいう。道路・河川・鉄道などの事業を施行する国・地方公共団体・公社・民間事業者などがこれにあたる。
土地収用の場面で「起業者」という耳慣れない言葉が必ず出てくるが、これは事業を起こす側、すなわち土地を取得しようとする事業主体を指す。土地収用法は、事業認定の申請から収用委員会での裁決まで、手続の各段階で起業者の権利義務を定めている。起業者は事業認定を受けることで収用手続を進める法的地位を得て、補償金の支払いと引き換えに土地の権利を取得する。会社を新たに興す意味の起業家とは無関係で、収用手続上の当事者を表す専門用語である。発注者や事業主と呼ばれる立場と重なることが多いが、収用法上は一貫して起業者という。地権者である被収用者と対をなす概念として理解するとよい。
収用手続における起業者の地位
起業者は、土地収用法上、収用手続の一方の当事者として位置づけられる。まず事業認定の申請を行い、国土交通大臣または都道府県知事から事業の公益性の認定を受けることで、その事業のために土地を収用・使用できる法的地位を得る。次に収用委員会に裁決を申請し、土地所有者ら関係権利者との間で補償額等の合意が成立しないときは、収用委員会の裁決によって権利取得や明渡しの時期・補償額が定められる。起業者は裁決で定められた補償金を支払うことで土地の権利を取得し、被収用者は土地を引き渡す。この手続の各段階で、起業者には補償金の支払義務や調書作成への関与など各種の義務が課される。
任意取得との関係
公共事業の用地取得は、原則として起業者と権利者の任意交渉による買収で進められ、収用は合意が成立しない場合の最終手段である。任意買収の段階でも、土地・建物の対価のほか、移転補償や営業補償など損失補償の考え方は収用の補償基準に準じて運用される。起業者は、まず任意での合意取得を尽くし、それでも応じない権利者がいる場合に事業認定と裁決による収用へ進む。被収用者(土地所有者・関係権利者)と対をなす立場であり、補償の公正さと事業の進捗をともに確保する責任を負う。
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