警戒区域とは、災害対策基本法第63条に基づき市町村長が設定する区域であり、災害が発生しまたは発生するおそれがある場合に立入りの制限・禁止や退去を命じることができる区域をいう。
避難指示を出しても従わず危険な区域にとどまる住民がいたり、復旧作業の妨げになる立入りを物理的に止めたい場面では、勧告・指示だけでは強制力が足りない。警戒区域はこの限界を埋めるため、区域を区切ったうえで立入りそのものを禁止し、違反に罰則を伴わせる強い権限として用意されている。
災害対策基本法第60条の避難指示が「人に出る」のに対し、第63条の警戒区域設定は「区域に網をかける」点が決定的に異なる。市町村長が行うのが原則だが、警察官・海上保安官や災害派遣を命ぜられた自衛官が代行できる場合もある。火山噴火・土砂災害・原子力災害など二次被害の危険が続く局面で設定され、解除まで関係者以外の立入りが封じられる。土砂災害警戒区域や津波災害警戒区域のように個別法が平時に指定する「警戒区域」とは制度系統が別である点に注意を要する。
避難指示との権限の違い
災害対策基本法は住民の安全確保手段を段階的に用意している。第60条の避難指示は対象者に避難を促す行為で、従うかどうかは最終的に本人に委ねられ強制力はない。これに対し第63条の警戒区域設定は、区域を指定して立入り自体を制限・禁止し退去を命じる物理的措置であり、これに違反した者には十万円以下の罰金または拘留という罰則が科される。避難指示が「逃げてほしい人へのメッセージ」であるのに対し、警戒区域は「立ち入らせない・残らせない空間の封鎖」であり、強制の度合いが質的に異なる。実務では、避難指示で動かない住民が出た段階や、危険区域での復旧・救助活動を確保したい段階で警戒区域へ移行する判断が問われる。
設定主体と代行の例外
設定権者は原則として災害が発生した市町村の市町村長である。しかし災害現場では市町村長が直ちに権限を行使できないことがあるため、災害対策基本法は代行の仕組みを置く。市町村長が現場にいない、または要請があった場合などに、警察官・海上保安官が警戒区域の設定や退去命令を行うことができ、災害派遣を命ぜられた部隊の自衛官も警察官がその場にいないとき同様の措置をとれる。原子力災害では原子力災害対策特別措置法により、内閣総理大臣の指示を受けて市町村長等が警戒区域を設定する枠組みが重ねて働く。誰が設定したかにかかわらず効果は同一で、関係者以外の立入りが禁じられる。
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