海岸法とは、津波・高潮・波浪・海岸侵食から国土を防護するとともに海岸環境の整備と適正な利用を図ることを目的に、海岸保全区域の指定・管理と海岸保全施設の整備について定めた法律である。
海岸沿いの自治体で「この防潮堤や護岸は何の法律に基づき、誰が管理するのか」を問われたとき、その根拠となるのが海岸法である。海岸法は、海岸を津波・高潮・波浪・侵食から守るべき区域として都道府県知事が海岸保全区域を指定し、その区域内に堤防・護岸・突堤・離岸堤などの海岸保全施設を整備・管理する枠組みを定める。管理の主体は海岸管理者で、原則は都道府県知事だが、港湾・漁港・農地に係る海岸ではそれぞれ別の管理者が分担し、一本の海岸線でも所管が施設目的ごとに分かれる。1999年の改正で、それまでの防護一辺倒から「防護・環境・利用」の三つの調和を目的に掲げる構成へ転換し、親水性や景観への配慮も検討の対象に加わった。自治体の担当者にとっては、海岸保全施設の点検や長寿命化計画、災害復旧事業の対象範囲を判断するうえで、対象の構造物や区域がこの法のどの体系に属するかの切り分けが実務の起点になる。
海岸保全区域の指定と四つの海岸管理者
海岸法は、防護すべき海岸の範囲を海岸保全区域として都道府県知事が指定する仕組みをとり、原則として陸側・海側それぞれ50メートルを超えない範囲で区域を定める。区域内の海岸保全施設の管理を担うのが海岸管理者であり、原則は都道府県知事である。ただし海岸の背後にある土地利用の目的に応じて所管が分かれ、一般の海岸を扱う建設海岸(国土交通省水管理・国土保全局所管)のほか、港湾海岸・漁港海岸・農地海岸の四区分があり、それぞれ港湾管理者・漁港管理者・農林水産部局が管理者となる。自治体担当者は、ある海岸線がどの区分に属するかによって点検・補修や災害復旧の窓口・補助制度が変わるため、対象区域の所管確認を作業の最初に置く必要がある。
1999年改正による「防護・環境・利用」の三本柱
海岸法は1956年の制定当初は高潮災害を契機とした防護を主目的としていたが、1999年の改正で目的規定に海岸環境の整備・保全と公衆の海岸の適正な利用を加え、「防護・環境・利用」の調和を掲げる法へと再構成された。これにより海岸保全施設の整備でも、堤防・護岸の高さや構造を防災面だけで決めるのではなく、砂浜や生物の生息環境、海辺へのアクセスや景観への配慮を併せて検討する運用へと変わった。東日本大震災後は、施設の設計対象を発生頻度の高い津波・高潮(レベル1)とし、これを超える最大クラスの津波(レベル2)は施設で防ぎきらず避難で命を守るという役割分担の考え方が定着し、海岸保全施設整備の水準判断の前提となっている。
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