自治紛争処理委員とは、地方公共団体相互の間または地方公共団体と国の機関等との間に紛争が生じた場合に、総務大臣または都道府県知事の任命を受けて調停・審査などを行う、地方自治法第251条に基づく臨時の第三者機関をいう。
都道府県と市町村の間で事務の解釈や負担をめぐって対立が生じたとき、当事者だけで決着がつかなければどこに持ち込めばよいのか。自治紛争処理委員は、こうした地方公共団体相互の紛争や、市町村に対する都道府県の関与への不服を、中立の立場で処理するために置かれる。3人で構成され、事件ごとに任命されて処理が終われば解任される常設でない機関である点に特徴がある。担う手続は、当事者の申請に基づく調停、都道府県の関与に関する市町村からの審査の申出に対する審査と勧告、連携協約に係る紛争を処理する方策の提示の3類型に整理される。国の関与を扱う国地方係争処理委員会が総務省の常設機関であるのに対し、自治紛争処理委員は都道府県の関与や自治体間の紛争を担当する点で守備範囲が分かれる。
処理する紛争の3類型
自治紛争処理委員が扱う事務は地方自治法上3つに分かれる。第一は当事者の文書による申請に基づく調停で、地方公共団体相互の間または地方公共団体の機関相互の間の紛争について、総務大臣または都道府県知事が委員を任命して調停案を作成し受諾を勧告する。第二は審査で、都道府県の関与(是正の要求・許可の拒否その他の処分など)に不服のある市町村長等からの審査の申出を受け、関与の違法・不当を審査して必要な措置を勧告する。第三は連携協約に係る紛争を処理するための方策の提示で、平成26年の制度創設により加わった。いずれも事件ごとに任命される点で常設の合議制機関と異なる。
国地方係争処理委員会との役割分担
国の関与をめぐる紛争は総務省の常設機関である国地方係争処理委員会が、都道府県の関与をめぐる市町村の不服や自治体相互の紛争は自治紛争処理委員が担当する。両者は地方分権一括法による機関委任事務の廃止と国・地方の関与ルールの法定化に伴って整備された争訟処理の仕組みであり、審査の結果に不服があれば最終的に高等裁判所への訴訟へ進める道が用意されている点も共通する。委員による審査・勧告という行政内部の中立的判断を経てから司法審査に至る二段構えにより、対等・協力を建前とする国と地方、都道府県と市町村の関係において一方的な力の行使を抑える設計になっている。
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