医療券とは、生活保護の医療扶助において、被保護者が指定医療機関で診療を受ける際に福祉事務所が月ごとに発行し、現物給付であることを証する帳票をいう。
医療扶助を受ける被保護者は、なぜ保険証ではなく医療券を提示するのか。生活保護受給中は国民健康保険の被保険者から外れ、医療費は全額が公費(医療扶助)でまかなわれるため、被保護者は窓口で自己負担せず、福祉事務所が発行する医療券を指定医療機関へ示して受診する。医療券は患者単位・医療機関単位・月単位で発行され、傷病名や診療予定を踏まえて福祉事務所が交付する点が、本人が常時携帯する保険証と異なる。調剤分は調剤券、訪問看護分は訪問看護指示にもとづく扱いとなり、券種が分かれる。実務では、急な受診で券が間に合わない場合の事後交付、頻回受診や重複処方の点検、レセプトと券の突合といった管理事務が福祉事務所と国保連の間で動く。受診のたびに券を要するため、被保護者・医療機関・福祉事務所の三者で交付と請求の流れを共有しておくことが滞りを防ぐ。
交付の単位と事務の流れ
医療券は、患者一人・医療機関一か所・暦月一枚を原則として福祉事務所が発行する。被保護者が受診を希望すると、福祉事務所はその傷病が医療扶助の対象かを医療要否意見書などで確認したうえで、当該月分の医療券を指定医療機関あてに交付する。医療機関は診療内容をレセプト(診療報酬明細書)にまとめて国民健康保険団体連合会(国保連)へ請求し、国保連の審査を経て医療扶助費が支払われる。月をまたぐ継続診療では月ごとに券が必要となり、月初の交付遅れが受診の障害にならないよう、福祉事務所はあらかじめ継続分を発行する運用をとることが多い。
調剤券・受診管理との関係
院外処方では薬局あての調剤券が別に必要となり、医科の医療券とは別葉で交付される。医療扶助は被保護者に窓口負担が生じない分、頻回受診・重複受診・重複処方が起こりやすく、福祉事務所は嘱託医協議や健康管理支援(被保護者健康管理支援事業)により受診の適正化を図る。指定医療機関以外での受診は原則として医療扶助の対象外となるため、被保護者が他の医療機関にかかる際は事前に福祉事務所へ相談し、必要なら指定医療機関の追加や転医の手続をとる。
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