発注者責務とは、公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)第7条が公共工事の発注者に課す責務で、市場の実態を反映した適正な予定価格の設定、計画的な発注、ダンピング受注の防止、施工状況の確認といった取組みにより、公共工事の品質確保とその担い手の中長期的な育成・確保に努めることをいう。発注者を品質確保の主体と位置づけ、価格だけでなく品質と担い手に責任を負わせる点に特徴がある。
公共工事の品質が確保できるかどうかは、施工する建設業者だけでなく、価格や工期、契約方式を決める発注者の判断に大きく左右される。発注者責務は、この発注者の役割を法律上の責務として明文化したもので、安ければよいという発注が品質低下や建設業の疲弊を招いた反省から、価格と品質の両面に発注者が責任を負うべきだという考え方に立つ。品確法第7条は、市場の実態を反映した適正な予定価格の設定、計画的な発注の推進、ダンピング受注の防止、完成後の施工状況の確認などを発注者の努めるべき事項として列挙する。とりわけ建設業の担い手不足が深刻化するなかで、適正な利潤を見込めない価格での発注を戒め、技能労働者の処遇改善につながる単価の適用を求める点が近年の改正で強められた。これらの責務を発注事務の各段階で実行できる水準に具体化したものが発注関係事務の運用に関する指針(運用指針)であり、発注者責務はその上位にある原則として、自治体を含むすべての公共工事発注者を拘束する。
価格偏重への反省から生まれた原則
発注者責務は、低価格での落札を優先する発注が、手抜き工事や下請・労働者へのしわ寄せ、ひいては建設業の担い手不足を招いたという反省を背景に、品確法によって発注者の側に課された責務である。それまで公共工事は最低価格での落札を基本としてきたが、品質確保には適正な価格と発注者の関与が不可欠だとの認識から、品確法第7条は発注者に対し、市場の実態を反映した予定価格の設定、ダンピング受注の防止、計画的な発注、施工状況の確認などを努めるべき事項として定めた。発注者が価格を不当に低く抑えれば、結果として品質と担い手の双方を損なうという因果が、この責務の根拠にある。
担い手確保と中長期的視点
発注者責務の特徴は、目の前の一件の工事だけでなく、建設業の担い手を中長期的に育成・確保する視点を発注者に求める点にある。技能労働者の高齢化と若年入職者の減少を受け、品確法の改正では、適正な利潤を見込める予定価格の設定、週休二日工事の推進、施工時期の平準化などが発注者の努めるべき事項として強められた。これは一発注者の裁量にとどまらず、地域の建設業の維持という公共的な利益に関わるため、自治体のような身近な発注者にも等しく求められる。発注者責務の具体的な実行方法は発注関係事務の運用に関する指針(運用指針)に示され、発注者はこの指針を参照しながら自団体の発注事務に反映していくことになる。
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