ジチテン

反射的利益

読み:はんしゃてきりえき

意味

反射的利益とは、法令が専ら公益の実現を目的として行政を規律した結果、私人が事実上享受するにとどまる利益であって、その侵害について行政訴訟で救済を求める法律上の利益とは認められないものをいう。

ある許認可によって不利益を受けると感じても、なぜ取消訴訟を起こせる者とそうでない者が分かれるのか。その分岐点が、法律上保護された利益と反射的利益の区別である。反射的利益とは、法令が公益を守るために行政の権限行使を定めた反射として、私人がたまたま受けている事実上の便益をいう。たとえば公衆浴場の距離制限が既存業者の経営を結果的に保護していても、それが専ら公衆衛生という公益のための規制であれば、既存業者の営業上の利益は反射的利益にとどまるとされうる。取消訴訟の原告適格は、処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限られるため、反射的利益しか持たない者は原告適格を欠き訴えは却下される。もっとも近年の判例と行政事件訴訟法第9条第2項は、根拠法令の趣旨・目的や関係法令を考慮し、個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むかを丁寧に読み取る方向にあり、かつて反射的利益とされた利益が法律上保護された利益と認められる例も広がっている。

法律上保護された利益との区別と原告適格

反射的利益は、取消訴訟の原告適格を画する「法律上の利益」(行政事件訴訟法第9条第1項)の裏側の概念である。処分の根拠法令が、不特定多数の利益を専ら一般的公益として保護しているにすぎないとき、その公益保護の反射として個々の私人が受ける利益は反射的利益とされ、原告適格を基礎づけない。これに対し、根拠法令が個々人の個別的利益をも保護する趣旨を含むと解されるとき、その利益は法律上保護された利益となり原告適格が認められる。両者の線引きは、法律が誰のどのような利益を保護しようとしているかの解釈に帰着する。

判例の展開と行政事件訴訟法第9条第2項

かつては根拠法令の文言を狭く読み、私人の利益を反射的利益と評して原告適格を否定する例が少なくなかった。しかし主婦連ジュース事件以降、判例は根拠法令の趣旨・目的や被侵害利益の内容・性質を実質的に考慮する方向へ進み、もんじゅ訴訟や小田急高架訴訟では周辺住民の生命・身体・生活環境上の利益を個別的利益として保護する趣旨を読み取り原告適格を認めた。平成16年改正で新設された行政事件訴訟法第9条第2項は、この解釈の到達点を明文化し、処分の根拠法令の趣旨・目的、関係法令の趣旨・目的、害される利益の内容・性質などを勘案して法律上の利益の有無を判断すべきことを定める。これにより、反射的利益として切り捨てられる範囲は相対的に狭まっている。

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