行政救済とは、行政活動によって権利・利益を侵害された国民を救済するための法制度の総称であり、違法・不当な行政作用の是正を求める行政争訟と、行政活動による損害を金銭で塡補する国家賠償・損失補償とに大別される。
行政の処分や事業によって不利益を受けた住民が役所に駆け込んだとき、その救済の道は「処分そのものを取り消す」のか「お金で穴埋めする」のかで分かれる。行政救済は、この二系統の救済を束ねる講学上の概念であり、行政法を学ぶ際の大きな見取り図となる。第一の柱は行政争訟で、処分の取消しや是正を求める行政上の不服申立て・行政訴訟がこれにあたり、違法・不当な行政作用そのものを正すことを目的とする。第二の柱は国家賠償と損失補償で、こちらは行政作用を正すのではなく、生じた損害を金銭で塡補することを目的とする。両者は、違法な公権力の行使による損害を賠償する国家賠償(国家賠償法に基づく)と、適法な行政活動によって特別の犠牲を被った者への損失補償(公用収用の補償など)に分かれる。担当課にとっては、住民の求めが処分の見直しなのか金銭の塡補なのかを早期に見極め、それぞれ別の制度・所管・期間で対応することが実務の出発点となる。これらの制度をまとめて行政救済法と呼び、行政組織法・行政作用法と並ぶ行政法の三本柱の一つに位置づけられる。
二系統の救済——争訟系と塡補系
行政救済は、目的の異なる二つの系統からなる。一つは行政作用そのものの違法・不当を是正する争訟系(行政争訟)で、行政上の不服申立てと行政訴訟がこれにあたり、処分の取消し・無効確認・義務付け・差止めといった手段で行政の判断を正す。もう一つは、行政作用によって生じた損害を金銭で塡補する塡補系で、違法な行政作用による損害には国家賠償(国家賠償法第1条・第2条)、適法な行政作用による特別の犠牲には損失補償(憲法第29条第3項・公用収用の補償など)が対応する。争訟系が「行為の是正」を、塡補系が「損害の金銭化」を担うという目的の違いが、救済を求める住民への案内や庁内の所管分けを考えるうえでの基本軸となる。同じ事案で、処分の取消しを争いつつ国家賠償も請求するというように、両系統が併用される場面もある。
行政法の三分野における位置
行政法は、行政の組織を定める行政組織法、行政の活動の仕組みとルールを定める行政作用法、そして行政活動による被害から国民を救う行政救済法の三つの分野に大別される。行政救済法は、行政不服審査法・行政事件訴訟法・国家賠償法という三つの主要法律を中心に構成される。自治体実務では、行政作用法に属する行政手続法・行政手続条例が処分の事前手続を規律するのに対し、行政救済法は処分後の事後的なチェックを担うという時間軸の対比でとらえると整理しやすい。処分を行う段階で適正手続を尽くしておくことが、後の救済段階での争訟リスクや賠償リスクを抑えることにつながる。
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