ジチテン

扶養義務

読み:ふようぎむ

別名:扶養義務者
意味

扶養義務とは、民法に基づき、一定の親族関係にある者が自力で生活できない親族を経済的に援助する義務である。

生活保護申請したとき、なぜ離れて暮らす親や兄弟に問い合わせがいくのか——その根拠が民法の扶養義務である。民法は、夫婦・直系血族・兄弟姉妹に扶養義務を課し、それ以外の三親等内の親族にも家庭裁判所が特別の事情があると認めれば義務を負わせられると定める。扶養には、自分と同程度の生活を保障する強い義務(生活保持義務、夫婦間や親の未成熟子に対するもの)と、自分の生活に余力がある範囲で援助する弱い義務(生活扶助義務、それ以外の親族間のもの)の二段階がある。生活保護では、補足性の原理により扶養が保護に優先するとされるため、福祉事務所は申請時に扶養義務者へ扶養照会を行う。ただし扶養義務は保護の要件そのものではなく、現に援助が行われればその分を収入認定するという「優先」にとどまる点が、しばしば誤解される。

生活保持義務と生活扶助義務という強弱

民法上の扶養義務は一律ではなく、二段階の強さに分かれる。夫婦相互間と、親の未成熟子に対する義務は「生活保持義務」と呼ばれ、自分と同じ水準の生活を相手にも保障しなければならない強い義務である。これに対し、成人した子と親、兄弟姉妹相互などの義務は「生活扶助義務」で、自分の社会的地位にふさわしい生活を維持してなお余力がある範囲で援助すれば足りる弱い義務にとどまる。生活保護の扶養照会で、別居の成人した子や兄弟への照会が「援助できる範囲で」という前提に立つのはこの区別による。義務の強弱を踏まえずに一律の援助を期待すると、扶養義務の法的な射程を誤って捉えることになる。

保護の「要件」ではなく「優先」にとどまる

生活保護との関係で最も誤解されるのが、扶養義務が保護の受給要件かどうかである。生活保護法は扶養義務者の扶養を「保護に優先して行われる」と定めるにとどまり、扶養義務者がいることや援助を断られたことが保護を拒む理由にはならない。現に金銭の援助が行われた場合に、その額を収入として認定するという運用上の「優先」であって、扶養できる親族がいるだけで保護が受けられないわけではない。2021年には扶養照会が申請をためらわせる要因になっているとして運用が見直され、本人が照会を拒む場合や扶養が明らかに期待できない場合には照会を要しないとする取扱いが示された。扶養義務の法的位置づけと、現場の扶養照会の運用との距離が、この語をめぐる実務上の焦点である。

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