エコノミークラス症候群とは、狭い空間で長時間足を動かさずに同じ姿勢を続けることで脚の静脈に血の塊(血栓)ができ、それが肺の血管に詰まって呼吸困難や突然死を引き起こす深部静脈血栓症・肺塞栓症の通称である。
車中泊や雑魚寝の避難生活で、なぜ持病のない人まで突然倒れるのか。その代表的な機序がエコノミークラス症候群である。長時間の同一姿勢と水分不足で脚の深部静脈に血栓ができ、立ち上がった拍子に血栓が肺へ飛んで肺塞栓を起こす。新潟県中越地震では車中泊避難の被災者にこの症候群による死者が相次ぎ、災害時の健康リスクとして社会的に注目された。航空機のエコノミークラスで起きた事例から名づけられたが、災害現場では車中泊だけでなく、避難所での床への雑魚寝や水分・トイレを控える行動が同じリスクを高める。予防は、こまめな水分補給・足の運動・着圧ソックスの着用と、そもそも横になって脚を伸ばせる段ボールベッドや簡易ベッドの確保にある。避難所運営や被災者の健康管理を考えるうえで、災害関連死の主要な原因の一つとして外せない概念である。
災害時に発症しやすい背景
医学的には深部静脈血栓症(DVT)から肺塞栓症へ至る病態を指し、災害時には複数の要因が重なって発症リスクが跳ね上がる。第一に、車中泊や狭い避難スペースでの長時間の同一姿勢で脚の血流が滞る。第二に、トイレが不足・不潔な環境で水分を控える行動が脱水を招き、血液が固まりやすくなる。第三に、ストレスや睡眠不足が加わる。新潟県中越地震では車中泊避難者の発症が問題化し、その後の災害でも避難所の床に直接寝る被災者に発症例が確認された。発災から時間が経つほど避難の疲労が蓄積して危険が増すため、避難初期からの予防の呼びかけが欠かせない。
避難所・車中泊での予防策
予防の柱は、血流の停滞・脱水・圧迫の三つを断つことである。具体的には、1〜2時間ごとに歩く・足首を動かす運動、意識的な水分補給、ふくらはぎを締める弾性ストッキングの着用が挙げられる。環境面では、脚を伸ばして横になれる段ボールベッドや簡易ベッドを早期に導入し、避難所の生活環境を表すTKB(トイレ・キッチン・ベッド)の整備と一体で進めることが効果的である。車中泊を選ぶ被災者には保健師による巡回での声かけや、座席をフラットにして脚を上げる工夫の周知が行われる。発症を見逃せば突然死に至り、災害関連死として数えられるため、発災直後から保健医療の体制に組み込んで監視・予防する論点である。
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