ケース記録とは、生活保護や各種福祉援護において、担当者が世帯ごとの相談・訪問・処遇の経過と判断根拠を時系列で記載し、実施機関が継続して保有する記録をいう。
保護の開始・変更・廃止や扶助の支給をなぜその内容で決めたのか、後から誰が見ても説明できるか——これがケース記録の核心である。生活保護では現業員(ケースワーカー)が家庭訪問・面接・関係機関との照会の都度、世帯の生活状況、稼働能力の活用状況、収入認定や資産調査の結果、援助方針会議で決めた方針を記載する。記載は処遇の根拠であると同時に、査察指導員による指導・監査、会計検査院や都道府県の指導監査で適否を判断する一次資料となる。判断の事実と根拠が記録に残っていなければ、後の不服申立てや返還決定の場面で実施機関が説明責任を果たせない。担当者の交代や世帯の転居(住所地特例・移管)に際しても、記録の引き継ぎが処遇の一貫性を支える。
監査で問われる「根拠の記載」
生活保護の指導監査では、保護費が正しく算定されたかだけでなく、その判断の根拠がケース記録に残されているかが問われる。たとえば稼働能力の活用を不十分と判断して指導指示を行う場合、就労状況・求職活動・本人の状態をどう評価したかを記載していなければ、処分の正当性を裏づけられない。法第63条の費用返還や法第78条の徴収金を決定する際も、資力の発生時期や不正の意図の有無をどの調査・照会で確認したかを記録で示す必要がある。記載の薄いケース記録は、処分の取消しや国庫負担金の返還につながる監査指摘の典型である。
様式と保存
ケース記録には、世帯の基礎情報を整理した世帯票(フェースシート)と、相談・訪問・面接・電話連絡の経過を日付順に記す経過記録(ケース記録票)がある。今日では実施機関の大半が福祉事務所の業務システムで電子的に管理し、収入申告書・資産申告書・主治医意見書・課税調査や金融機関照会の回答など、判断の裏づけとなる書類と一体で保存する。保護廃止後も一定期間の保存が求められ、再申請や費用返還の調査の際に参照される。記録は被保護者本人の個人情報であり、開示請求の対象にもなるため、事実と評価を区別して書くことが運用上重要となる。
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