分散避難とは、災害時に住民を指定避難所だけに集中させず、在宅避難・親戚や知人宅への避難・車中泊など複数の避難先に分けて避難させる考え方である。
避難所が定員を超えてしまう、あるいは感染症が流行している状況で、すべての住民を指定避難所に集めてよいのか。分散避難は、避難所の過密を避けるため避難先を意図的に分ける発想であり、新型コロナウイルス感染症の流行下で全国に広まった。安全が確保できる住民は自宅にとどまる在宅避難、被災していない親戚や知人の家へ移る縁故避難、やむを得ない場合の車中泊など、複数の選択肢を住民自身があらかじめ考えておくことを促す。市区町村にとっては、避難所以外に分散した被災者をどう把握し、物資や情報をどう届けるかが課題になる。避難所に来ない人を「避難していない人」と見なすと、在宅避難者や車中泊避難者への支援が抜け落ちるためである。
分散避難が広まった背景と避難先の類型
分散避難は、避難所の収容力には限りがあり、災害のたびに過密や衛生環境の悪化が繰り返されてきたことを背景に推奨されるようになった。とりわけ新型コロナウイルス感染症の流行下では、密閉・密集・密接を避けるため避難先を分けることが感染対策と直結し、各市区町村が住民へ周知した。避難先の類型は、自宅の安全が確保できる場合にその場にとどまる在宅避難、被災していない親戚や知人の家へ移る縁故避難、自家用車で寝泊まりする車中泊避難、そして従来の指定避難所への避難に大別される。住民は自宅の災害リスクをハザードマップで確認したうえで、どの避難先を選ぶかをマイ・タイムラインなどであらかじめ決めておくことが望ましい。
分散避難がもたらす支援上の課題
避難先が分かれると、市区町村が被災者の所在と困りごとを把握しづらくなる。指定避難所に来ない在宅避難者や車中泊避難者は支援の網から漏れやすく、物資の配布や罹災証明書の手続き、健康状態の確認が届かないおそれがある。とくに車中泊避難では狭い車内で同じ姿勢を続けることによる肺塞栓症(エコノミークラス症候群)の発症が懸念され、過去の地震では死者も出ている。市区町村は、避難所を情報・物資の拠点として位置づけつつ、被災者台帳の整備や巡回によって分散した避難者を捕捉し、在宅・車中泊の避難者にも避難所と同等の支援を届ける体制を地域防災計画に組み込むことが課題となる。
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