分限免職とは、勤務実績が良くない場合や心身の故障、職に必要な適格性を欠く場合などを理由として、職員の意に反して職を失わせる、地方公務員法第28条第1項に基づく分限処分の一類型である。
同じ「免職」でも、本人の非違行為を制裁する懲戒免職とは根拠も趣旨もまったく異なる。分限免職は地方公務員法第28条を根拠とし、職員に故意や過失がなくても、能力不足や心身の故障で職務を続けられない状態をそのままにしておけないという、組織の能率維持のために行う身分上の処分である。第28条第1項は、勤務実績が良くないこと、心身の故障のため職務の遂行に支障がありまたはこれに堪えないこと、その職に必要な適格性を欠くこと、職制もしくは定数の改廃または予算の減少により廃職もしくは過員を生じたことの四つを免職事由として定める。身分保障の例外に当たるため、事由は条例または規則で定めるものに限られ、恣意的な運用は許されない。とりわけ「適格性を欠く」ことを理由とする場合は、矯正の余地のない持続的な不適格性が客観的事実に基づいて認められることが必要であり、判例上も厳格な立証が求められてきた。退職手当の扱いも、制裁である懲戒免職とは異なり原則として通常の自己都合等に準じて支給される点で実務上の差が大きい。
懲戒免職との違い
職を失わせる処分には分限免職と懲戒免職の二つがあり、両者は条文も趣旨も効果も異なる。分限免職は地方公務員法第28条に基づき、勤務実績不良・心身の故障・適格性欠如・廃職過員といった、本人の責任を問えない事由に対して組織の能率維持のために行う。これに対し懲戒免職は同法第29条に基づき、法令違反や職務上の義務違反など本人の非違行為を制裁するために行う。最も実務に影響するのは退職手当の差であり、懲戒免職では原則として全部または一部が支給制限されるのに対し、分限免職では制裁の性質がないため通常は支給される。処分を争う場面でも、適格性の有無という事実評価が中心になる分限免職と、非違行為の存否・量定の相当性が争点になる懲戒免職とでは主張立証の組み立てが変わるため、どちらの処分かの見極めが出発点になる。
適格性欠如を理由とする場合の制約
第28条第1項のうち「その職に必要な適格性を欠く場合」を理由とする分限免職は、最も慎重な運用を要する類型である。単に勤務態度が好ましくない、上司との折り合いが悪いといった事情では足りず、職員の素質・能力・性格等に起因して職務を滞りなく遂行することに支障が生じ、かつ簡単に矯正できない持続的なものであることが、具体的な事実の積み重ねによって裏づけられる必要がある。任命権者の裁量に委ねられるとはいえ、その裁量も合理的な範囲を超えれば違法となるため、指導や配置転換による改善の機会を与えた経過を記録しておくことが、後の争訟に備えるうえで欠かせない。心身の故障を理由とする場合も、医師の診断など客観的資料に基づく判断が前提となる。
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