安否不明者の公表とは、大規模災害の発生直後に、市区町村または都道府県が安否の確認できていない住民の氏名・住所・年齢などを報道機関等に提供して明らかにする取組である。捜索・救助の対象を絞り込み、所在情報の把握を早めることを目的とする。
災害発生直後、行政が把握しているのは「この地区で何人と連絡が取れない」という総数だけで、誰が無事で誰が見つかっていないのかが分からなければ、限られた救助力をどこへ向けるか判断できない。安否不明者の公表は、氏名を出すことで「その人なら避難所にいる」「県外の親族宅へ逃げた」といった情報を社会の側から引き出し、救助対象を実際に倒壊家屋等に取り残された人へ絞り込む仕組みである。
本来、生存する個人の氏名は個人情報保護の対象であり、行政が外部へ提供するには本人同意か法令上の根拠を要する。災害時には本人の同意を得る余裕がないため、内閣府は2021年(令和3年)に都道府県向けの考え方を整理し、生命・身体の保護に必要な範囲で同意なく公表しうるとの運用を示した。これを受けて都道府県側が公表の判断基準や除外要件を事前に定める動きが広がった。
判断の難しさは、公表が捜索を加速する一方で、DV・ストーカー被害者や住所を秘匿している人を危険にさらしうる点にある。そのため公表前に当該リスクの有無を照合し、本人や家族が拒んでいる場合や保護対象者は対象から外す運用が標準となっている。発災から公表までの時間が救命率を左右するため、平時から様式・除外チェックの手順を準備しておくかどうかが実務上の分かれ目となる。
同意なき公表を支える法的整理
生存している個人の氏名・住所は個人情報保護法上の個人情報であり、行政が同意なく第三者へ提供することは原則できない。しかし災害直後は本人の同意取得が事実上不可能で、それを待てば救助が遅れる。内閣府は2021年(令和3年)の通知で、安否不明者の氏名等を公表することは個人情報保護法が認める「人の生命・身体・財産の保護に必要で本人同意を得ることが困難なとき」に該当しうるとの整理を示し、各都道府県が事前に基準を定めて運用する方向を促した。根拠を平時に確認し公表要綱として明文化しておかなければ、発災時に法的な迷いから判断が遅れる。この「同意なき公表の可否」が、安否不明者の公表をめぐる最大の論点である。
公表対象から外す配慮と照合
氏名公表は捜索を早める反面、住所を秘匿して避難している人を危険にさらす副作用を持つ。とりわけDV・ストーカー・児童虐待からの避難者は、加害者に居所を知られれば生命の危険に直結する。このため公表前に、支援措置の対象者名簿や本人・家族の拒否の意思と照合し、リスクのある者を公表対象から除外する手順が標準となっている。実務では氏名・住所だけを公表し生年月日や続柄は伏せる、自治体によっては年齢を加えるなど、公表項目の範囲も判断を要する。照合に時間をかけすぎれば公表の目的である救助の迅速化が損なわれるため、平時に除外チェックの様式と判断権者をあらかじめ定めておくことが鍵となる。
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